ビ  シ  ョ  ッ  プ  の  名



 薄暗い森の中を、男はただ闇雲に歩き続けていた。
 もうすぐ日が暮れる。
 それ自体はどうということはないのだが。

 男は追い詰められていた。
 いつ現れるとも知れぬ追っ手の影に怯えて。

 簡単な仕事のはずだった。
 2・3日は困らないといった程度の酒代を稼ぐための。
 何らかの専門的な技を持っているわけでもない、どこにでも売られて
いるような剣をただ腰からぶら下げているだけの男にでもできるような
仕事をと紹介されたそれを、男は軽い気持ちで引き受けた。

 その結果が、これである。
 何故こうなったのかは判らない。
 おそらくは何らかの陰謀に巻き込まれたのであろうが、男の脳味噌は
そこまで回らなかった。
 今、彼の頭の中を占めているのは、いかに追っ手をやり過ごすか。
 ただそれだけである。
 ……いや、もう一つ。
 一刻も早く、村を、せめて人が住んでいる場所を見つけ出さなくては。
 旅の支度などしているはずもない、ほぼ身一つと言って良い状態で
逃げ出してきた彼は、もう3日もロクな食事にありつけていなかった。

 不意に、何かに蹴躓いて男の身体がよろめく。
「……チッ」
 舌打ちをしながら足元に視線を落とす。
 始めにボロ布が見えた。
 次に見えたのは元は象牙色であったのであろう物の、所々が茶に変色
した奇妙な棒。
 そして、
「うっ…!?」
 肉片が未だ生々しくこびりついた、明らかに人のものと知れる頭蓋骨。
 行き倒れたのか。
 あるいは何者かに襲われたか。
「クソ……ッ」
 こうはなりたくねえぜ。
 足早にそこから立ち去ろうとする、その頤(おとがい)が微かに上がった。
「………………なんだ?」
 男は目を細める。
 森は静かだった。
 その静寂の合間を縫って、微かな旋律が聞こえてくる。
 どこかで、ギャアと鳥の鳴く声がした。

 追手か!?
 いや、追手ならこちらに気付かれないように近付いてくるはずだ。
 ああ、だが、これが自分を油断させるものだとしたら…。

 男は戦慄する。
 戦慄しつつ男は迷った。
 逃亡か。
 投降か。
 戦闘か。
 男は迷いに迷った挙句、とりあえず、剣を手に持つことにする。
 だが、剣を鞘から引き出す作業に手間取っているうちに、それは更に
こちらへと近づいてきていた。

 ざわり、ざわり、と草叢が鳴る。
 旋律は更に深くなる。
 ようやく剣を抜き取り、男はそれを体の前に立てて構える。
 まるで剣の背後へと身を隠そうとするかのように。
 目の前の茂みが揺れる。
 男は、じり、と後ろに退く。
 この時点で旋律は女の、奇妙な歌であることに気付いていた。
 その言葉は意味不明で何を歌っているのかはサッパリわからなかったが。

 癇に障る。
 
 男は耳の奥にこびりついてくる歌を振り払うかのように軽く頭を振る。 
 その瞬間、がさり、と丈の低い木の枝が左右に分かれ。
 夢幻のように、一人の女が姿を現した。
「だ、誰だ!」
 疲れはじめてきた腕で剣を構え直し、男は誰何する。
 だが、女からの答えはない。
「テメエは誰だと聞いている!他に仲間は居ンのかっ、ええっ!?」
 虚ろに開かれた両の目と唇。
 意志などまるで無い、白痴のようなその相で、女はただひたすらに
歌を紡ぐだけである。
 その様子から、男は判断する。
 この女は追手ではない、と。
 ならば、次にやるべきことは……。
「おい、女ぁ!テメエが持ってる食料と有り金全部出しやがれ!!」
 男は、彼が持ちうる限りの殺気でもって女を脅す。
 女の反応は……やはり何も無かった。
「こ、このアマ……死にたく、…………ゥグッ!?」
 奇妙な呻き声を上げつつ、男は慌てて片耳を塞ぐ。
 女が一歩踏み出した瞬間、歌が更に強くなったのだ。
 だが、片耳を塞いでも、歌は一向に弱まらない。
 男の掌ごときで、這入りこんでくる歌を塞き止めることなどできはしない。
 歌は、鼓膜を震わせているのではなく、殷殷と、頭の中に直接響いているのだ

「……今すぐ、この場を立ち去りなさい」
 不意に、声が聞こえた。
 歌と男の声、以外のものである。
 目の前に立つ、女が発したものであった。
 だがその唇から溢れる歌は、女が言葉を発している間であっても尚、
ただの刹那も途切れること無く紡ぎ出されている。
 これは一体どういうわけなのか。
 男には当然知る由も無い。
「この歌は死せる者の為にある歌。生ある者が長く聞いて良いものでは
ありません」
 女は更に一歩踏み出す。
 男は剣を捨て、両手で耳を塞いだ。
 大地に転がる金属音は、男の耳には届かない。

 男は堪らず怒鳴り声を上げる。
「止めろ!!その歌を止めろ!!」
「それは叶いませぬ。この歌は、わたくしが望むものではありませぬゆえ…」
 冷徹とさえ感じるほどの虚ろな声。

 男は女に殴りかかっていた。
 ただ、歌を止める為に。

 だがそれはけして果たされることはなく。
 男の視界にある女の姿はゆっくりと斜めに傾いで、暗黒の中へと
掻き消えたのであった。
 



       *  *  *  *  *  *



 ………っかり……




 ……しっかりなさいませ………



 どこか遠いところから声が聞こえてくる。
 目を上げると、

 暗闇の中に、暗紺の双眸が静かに浮かんでいた。


「………………っ!!」
 何か、硬い木の箱のようなものが掌に当たった。
 全身を強張らせつつ、それでも口から飛び出そうになる悲鳴を
寸での所で堪えたのは男の意地のなせる技だったのか。
「気が……つかれましたか……」
 額にひやりとした感触が触れる。
 朦朧としていた意識が一つのところに収束してくる。
 宙に浮かぶ二つの目は、己を見下ろす女のものだと理解した時、
男は慌ててその視線から逃れた。
 すなわち、身を横たえていた大地から一息に起き上がる。
「うえっ」
 次の瞬間、酷い頭痛が襲った。
「……無理はなさらず」
 抑揚の無い、低い声で言いながら、女は男に濡れた布を差し出す。
 その布を受け取りつつ、目敏く見つけた水袋も素早く奪い、男は
その中身を胃袋の中へ一気に流し込んだ。
 ものの数秒でその口を離し、音高らかにけっぷをすると、グイと
腕で口元を拭う。
 空になった水袋を大地に投げつけ、男はようやく口を開いた。
「……なんだ、ありゃ」
 何、とは今は既に途絶えている、女の歌を指してのことである。
 女は答えない。
 質問の意味を解りかねているというわけではなさそうだが。
 伏目がちの目は何も語らず、その表情からは何一つ窺い知ることは
できない。
 ぼろぼろの、色気の無い屍衣のような服。
 酷くくすんだ黒に近い灰色の髪。
 先程、暗闇の中に瞳だけが浮かんでいるように見えたのは、日が
すっかり暮れかけていることに加え女の肌が褐色であるせいでも
あったのだ。
 色彩の、全体的に暗い女だった。

 辛気臭い女だ、と男は思う。

「お前ぇは一体何モンだ?」
 女はやはり答えない。

「……………名前はっ?」
 多少のイラつきを隠そうともせず、男は尚も尋ねる。
 ずきり、と頭が少し痛んだ。
 思い出したように、手に持っていた布を額に当てる。

 ぬるい。


「………わたくしに、名前はありません」
 ぽつり、と女はようやく言葉を発した。
 その声はか細く、今にも消え入りそうな声であった。
「…わたくしに名前はありません。
 わたくし達を指して呼ぶ名はいつもひとつ。『弔歌夫人』と――」

「弔歌夫人?聞かねえ名だな」
「とうの昔に潰えし民の名にございます」
「ふーん」

 それきり、二人の間に沈黙が落ちる。
 日は既にすっかり落ち、空には星が瞬き始めていた。

「………あの歌は、」
 再び口を開いたのは、はからずも女の方であった。
 大地に座し、伏目がちの瞳で相変わらずぼそぼそと唇を動かす。
「あの歌は、たった一人で死に赴く者を送る為の歌。
 『誰も看取ってくれぬのか』と嘆く魂を慰める歌であります」
 例えば、あの、朽ちかけていた死体がそうであるのか。
「……そういや、自分が歌ってるんじゃないと言っていたな、さっき」
 男は視線だけを女に向けてつまらなそうに訊ねる。
 大した答えは求めていない。
「………はい」
 女の視線が、す、と上がった。
「じゃ、誰が?」
 男の問いに、女の視線は再び落ちる。
 僅かな沈黙の後、女は溜息のように言葉を吐き出した。
「…………あの歌は、『世界』によって望まれているのだと、
わたくしは伝え聞いておりま……―――――っ!?」
 最後の一言を言い終わるよりも前に、女の体は男の腕の中に
捕らえられていた。
「その話はもういい。それよりも―――」

 イイコトしようや。

 熱い吐息がねっとりと女の首筋を這う。
 男は欲情していた。
 飯には三日ありつけていなかったが、女はその倍以上も
ご無沙汰だった。
 久々に嗅ぐ雌の匂いである。
 欲情しないわけがない。
「おっと、暴れんなよ?アンタが大人しくしてりゃ、俺だって
無体な真似はしねえさ」
 男は力任せに女を後ろに押し倒す。
 だが、予想に反して女は一切の抵抗も見せなかった。
 力を出しすぎて大地に叩きつけそうになった女の体を、思わず
その両腕で庇ってしまったほどである。
 いっそ潔いと言えるほどの無抵抗ぶりをしめす女は、『能』という
テーヴァの古代舞踊に使われる面のような表情で男を見上げていた。
 その唇が、相変わらずぼそぼそと小さく震える。
「………お代は、しっかり頂けますね?」
 おっ、と男の表情が変わった。

 なんでぇ、『その道』の女かよ。
 だったら話は早い。

 男は相好を崩して女に答える。
「ああ、もちろんだとも。しっかり払ってやるよ」

 でもよ。
 死人に金はいらねえだろ?

 直後に浮かんだ残忍な陰を隠すかのように、男は女の胸に顔を
埋める。
 女は僅かな動きさえも見せなかった。
 呻き声一つ漏らさず。
 震えもせず。
 ただ……、

 不意に、男の動きが止まった。

 性急に衣をたくし上げる手が腹に触れた時、女の手が何気なく
その手を別の場所へと導いた。
 『それ』に、気付いてしまった。
「テメエ……」
 搾り出すような男の声が、暗闇の中で静かに響く。

「ガキを、孕んでいるな?」

 カサカサと、女の耳元を何かが這っていった。
 虫か、小さなトカゲか何かだろう。

「それが、どうしたというのです?」
 女は掠れた、抑揚の無い声で答える。
 肯定だ。

 男は顔を上げる。
 ぎらつく双眸が、ただ虚ろに中空へと向けられている
女の下顎を睨みつける。
 闇の中で、ちっ、と音が鳴った。
「…………あーあ」
 おもむろに、男は女の体から身を起こし、そのまま草叢へと
後ろ向きのまま倒れ込む。
「クソッ、興醒めだ!!」
 虚しく叫ぶ男の隣で、女が身を起こした。
 衣は足の付け根まで捲り上げられ、すらりと伸びた両脚は
露わになったままだ。
「……戻せよ。冷やすぞ」
 男はちらりと視線を走らせ、苦々しげに言いながらすぐに上空へと戻す。
「…わたくしを、買って下さるのでしょう?」
 声だけが届く。
 何度聞いても感情の掴めぬ声だ。
「止めだ。流れちまったら、」
「それもまた『運命』というもの」

「バカヤロウ、わざとそうなりやすい道選んでサダメもクソもあるか」
 のそり、と男は身を起こし、女の顔を見る。
 女は、ほんの僅かだが、確かに、意外そうな顔をしていた。
 この女にそのような表情を浮かべさせただけでも、男は
『してやったり』と思わずにはいられない。
 だがそれと同時に。

 男はククッと喉を鳴らす。
 ほんの数秒前まで、己は、この女を殺そうとしていたのだ。
 それが今は腹の子の身を案じている。
 これ以上、滑稽なことはあるまい。

 ニヤニヤと笑みを浮かべる男を、既に元の無表情へと戻っている
女が無感情な瞳で見つめている。
 それに気付いて、男は慌てて顔を引き締める。
「と、とにかく。俺はお前を絶対ぇ買わねえからな」
 相手をしっかと睨みつけ、キッパリと断言した。

 ふと、滑稽ついでにあることを思いついた。

 男はキョロキョロと地面の上を見回す。
「……おい、さっきの死体はどこだ?」
 男の意図をはかろうとし、だが結局はかりかねたのか、
一呼吸置いて、女は離れた地点を掌で指し示した。
「あの辺りに…」
「そうかぃ。結構遠いな」
 ぼやきながら男は立ち上がる。
「俺をココまで運んだのか?」
「………………」
「重いモン、持つんじゃねえよ」


 一歩前へと踏み出して、あ、と男が振り返る。
「あの歌は、」
 と尋ねる顔は『あんな思いは二度と御免だ』とばかりに顰められていた。
「もう……大丈夫かと」
「……そ。」
 女の言葉にそっけなく答え、男は死体の元へと近付いていく。
 途中で落ちていた己の剣を拾い、辿り着くや否や何かを調べ始めた。
「お、あったあった…」
 おもむろに、地面へと剣を突きたてる。
 闇の中に火花が散り、剣と硬いものがぶつかり合って立てる
金属音が高く響く。
 そして浅く掘り起こした土を剣の先で何度か払い。
 その中から何かを拾い上げた。
 男の指の間で何かがかすかに煌く。
 同じような作業を何度か繰り返し、男はようやく死体から離れた。
 そのまま女の元へと戻って来る。
 男が元の場所へと辿り着く前に、女の目の前へと何かが放られ
慎ましやかな金属音が大地に響いた。
 金、銀の指輪と金の鎖。
「これは…」
「持っていきな」
 訝る女に男は答える。
「どうせ死体にゃ必要のねえもんだ。多少気持ち悪ぃかも知れねえが、
すぐに売っ払っちまえば問題ねえだろ」
 死体が身につけていた貴金属を奪い取った男は平然と言ってのける。
 指輪を外す為に骨を砕き、首に巻かれていた鎖を外す為にも同様の
ことをしたのであろう。
 この行為をプリースト以外の一体何人が『罰当たりな!』と感じるだろうか。
 そして、女は…。

「いいえ、頂くわけには」
 目の前に落ちている指輪たちには身動ぎもせず。
 女は小さく、だがはっきりと言い返した。
「金がいるんだろうが。取っとけって」
 片目を眇めて女を睨み返す。
 だが、その言葉にも、女は小さく頭(かぶり)を振るばかりである。
「施しは受けねえってか?ハッ、強情な女だ」
 最終的にはやはり黙り込む女に、男は次第に苛々を募らせる。
「そんな痩せっぽちで、乳はちゃんと出んのか。それに、赤ん坊が生まれりゃ
要り用なものが山ほどあるだろが。産着やら、おむつやら……ああ、もう!!」
 男はグシャグシャと頭を掻き毟った。
「いいから、貰えっつったら黙って貰っていきやがれ!!」
 まるで地団太でも踏むかのような、癇癪をおこすその様子は酷く子供染みてい
て。
 それに根負けしたのか、
「…………では、ひとつだけ」
 ようやく口を開いた女は暗紺の瞳を上げ、男の顔を真っ直ぐに見つめる。
 そして、
「名を、お聞かせ願えますか?」

「あン?名前?」
 予想だにしていなかった問いかけに、男は間の抜けた声を発してしまう。
「名前なんざ聞いてどうするつもりだよ」
 女は答えない、……ということはなんとなく予想がついていた。



「………尾白」


 しばし悩んだ末。
 ゆっくりと、鼻から大きく息を吐き出し男はそれを口にする。
「尾白 阿世爾…」
 と。
 ここまで言い、男はハッと気がつく。
 自分は追われているのだ。
 この女、まさかタレ込むつもりではあるまいな!?

「そうですか…」
 女は、俯いていた。
「…………もし、この子が無事に生まれ来ることができたら、」
 その掌で、そっと己の腹に触れる。
 優しく、慈しむ様に。

「―――その時は、貴方の名前を頂きましょう」


「おいおい、」
 女の言葉を聞き咎め、男は慌てて制する。
「何も、選りによってこんなゴロツキの……他にもっと良い名前が
あるだろが。ビショップの名前とか、」
 大体、娘だったらどうするつもりなのか。
 だが、なんとか思いとどまらせようとする男の言葉にも、女は
小さく首を振るばかり。
「…もう、決めたのです」
 唇に、幽かな笑みが浮かんでいた。
 それはまるで、夜空を覆う暗黒の雲の合間から、ほんの僅かな
瞬間にだけ降り注がれる柔らかな月の光のような。
 そんな、微笑だった。

 この女の意志を捻じ曲げるのは、どんなに高名なソーサレスで
あっても成し難いだろう。
 男は女への説得を早々に諦め、
「勝手にしろ」
と精々言い捨てるのであった。
 

 風が一つ、吹き抜けた。
 それに何を感じ取ったのか、急に落ちつきを無くした男が
キョロキョロと首を動かし辺りを覗い始める。
 追手が……。

 闇の中に生い茂る木々の、その遥か向こうを睨みつけ、
「………ところでずっと気になっていたんだけどよ」
男は静かに訊ねながら女の傍らに転がっている奇妙な物体を指差した。
「そいつぁ、一体なんなんだ?」
 1本の細い木の棒の片端に、いびつな円形に近い小さな箱のようなものが
付けられた、奇妙な物体。
 ああ、これは…、と女はそれを手に取り、自らの体に立てかけるように
して膝の上に乗せる。
「これは………『コ』です」
「『コ』?」
 鸚鵡のように言い返す男の言葉に頷きながら、棒の部分に
括りつけてあった皮紐を解き、同じく棒のような何かを外して右手に取る。
 『棒のようなもの』には獣の皮が張られていた。
 すなわち、弓である。
「ええ。このように……、」
 そして、十字をつくるようにその弓を当て、ゆったりと流れるように動かす。
 と。

 朗々と、震える音色が闇の中に染み渡っていった。


「やっぱり楽器だったか……なあ」
 振動が絶えた弦から弓を離し、女は静かに面を上げる。
「一曲、頼んでも良いか?」
「……ええ、喜んで」
 短く答えて、女は、箱と対をなすように棒のもう片端に付けられた、
調弦用の捻りを握る。
「湿っぽいのは聞きたくねえな。どうせなら、陽気なヤツを」
「承知しました」
 女は幾度か試し弾き、弦を指で押さえ弓を当てると静かに目を閉じる。
 細く、長く息を吐き、深く息を吸い込む。
 呼吸が止まった。
 おもむろに弓を流す。


 男は闇に向かって一気に走り出した。



                            (了)
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ピピルマ ピピルマ プリリンパ☆
パパレホ パパレホ ドリミンパ☆

アダルトタッチで書くとしたらこれが上限かと。
あれ以上は検閲に引っ掛かります確実に。

ああああああ良い子のファンタジアが……!!


菅野


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