●砂漠の見る夢●



砂漠は夢を見る。
昼の灼熱の地獄。凍えるような夜の冷気。
そんな所でも夢を見る。
砂漠が夢を見るときは。真っ赤な花と真白な花が一輪ずつよりそうように咲くのだ。
「レイリリの記憶の母の声」より

ワイマール団仮宿(無人家宅無断侵入)
室内は月の光で薄暗く静かな寝息と虫の羽音だけが聞こえた。
そんな静かな世界を壊すようにドアが大きく開け放たれた!
「いま帰ったぞ!宴会だ!」
皆、睡眠を妨害され目を擦りながら起きた。中にはまだ寝ているものもいるが、レイリリだ。
「この前ちと気になることがあってな。ちょいと調べていたらこいつを見つけたんだ。コイツは将来でけえ人間になると思ってな。今のうちに訓練すりゃぁ、城の兵士もビビルような男になると思うぜ」
この男がワーマル・クライト。黒髪、褐色の肌。背が低いく痩せているが威圧感のある男だ。ここの盗賊団の頭である。
彼は、連れてきた少年の背をバシバシ叩きながら説明した。少年が少々顔を痛みに歪ませながら背中をさすった。
「おい、自己紹介だ。少年!」
「・・・コリュウスです。歳は7っす。よろしくお願いします」
皆コリュウスの年齢を聞いて驚いた。レイリリと二つしか違わないのにここまで違うとは思わなかった。
まあ、めでたい事には変わりがなく、楽しい事が人一倍好きな奴等ばかりなので、眠気も忘れ宴会騒ぎとなった。
コリュウスはこの空気には馴染めずただ、黙って座ってやり過ごそうとしたが皆からの質問攻めにあい、ワタワタとやり過ごした。

やがて宴会もコリュウス以外のものが酒に酔い潰れる形で終わった。酒を勧められたが断ったからだ。
コリュウスは立ち上がり全員寝ていることを確認した。
そしてレイリリに近寄り彼女を担ぎ、外へ出て行った。
ゆっくりと慎重に歩いていくコリュウス。彼に担がれ、静かに寝息を立てるレイリリ。二人の影を月が照らし出していた。
背後からゆっくりと忍び寄るように近づいてくる者を影が出来て暗くなったのでコリュウスは察した。
「アーゲルト・・・」
彼は後ろを振り向かず止まる。
「さすがだな。そいつが例の子か?」
濁声でアーゲルトと呼ばれた男が話し掛けた。
「こいつ。俺たちの仕事、見てた」
「へへっ。見つかるとやばいもんな〜。あの仕事は。さ、こっちだ」
用意された馬車に乗り、町を出て行った。